プラチナといえば、とても頑丈な金属で長く使われても輝きが失われない、劣化しにくいという事で指輪とか宝石に使われている金属で、パラジウムとか、インジウムとか、名前も聞いた事の無い様なレアメタルに比べたらとても一般的な金属。
ところがプラチナは、とっても希少な金属で、30グラムの純粋なプラチナを抽出するのに10トンもの鉱石を採掘し5ヶ月以上の時間を費やさないといけないそうだ。その上、人類の歴史の中で採掘されたプラチナの量を合計しても、普通の家庭のリビングルーム2部屋分位に収まってしまう。
世界的に見てこのプラチナの使用用途は、自動車の触媒、宝石、プラグの電極、ハードドライブなどあるが、その中でも自動車の触媒の需要が非常に大きく全体の50%ほどを占める。
ただ、去年10月の暴落以前にはプラチナの高沸が続いたために、自動車業界でも他の代用品パラジウムを使い初めプラチナの需要は落ち着いてきていた。実はこの触媒の事が良く分かっていないのだが、自動車の触媒にはプラチナを使用したディーゼル微粒子フィルター(DPF)とプラチナとパラジウムを併用したディーゼル酸化触媒(DOC)の2種類があるらしい。
DOC(diesel oxidation catalyst) はエンジンから出る一酸化炭素と炭化水素を酸化するのに使われる触媒。ただ、DPFとは違い粒子状物質を取り除く機能は弱い。
DPF(Diesel Particulate Filter)は、(ディーゼル パティキュレート フィルタ)の略で、ディーゼルエンジンの有毒な排出ガスのうち粒子状物質(トラックの黒い排気ガスみたいなの)を取り除く装置。という事で、DPFは既存の車にも設置できる触媒であり、日本でも2003年の排ガス規制の時にはこのDPFがバス、トラックなどに取り付けられた。
この二つの触媒の内、代用品パラジウムが利用できるのはDOCだけであり、DPFの方では、効果的な代用品は今の所即効性がある代用品は見つかっていない。三井金属若しくは鉱山がプラチナよりも安価な銀を触媒にする技術を暖めている事を発表するも実現は2012年以降との事であり、完全にDOCに代わる物が出来るかどうかは未知数だそうだ。
三井の触媒に関する記事のソース
とういう事で自動車関連のプラチナの需要は今回の金融危機の影響で自動車販売が落ち込む事が予想されているが、欧州では、排ガス規制のEURO5が2009年から2010年初頭にかけて発効され欧州で販売されるほぼ全てのディーゼル車はプラチナを使用したディーゼル微粒子フィルターの装着を余儀なくされるため、プラチナの需要が下がる事は無い。
下記の田中貴金属の需給レポートのグラフを見て頂ければ分かる通り、過去の需要と供給のバランスを見ているとここ5年位は需要の方が多い。
供給面を見てみると、金、銀などの金属はある程度供給国が分散されるんだけど、プラチナはほとんど分散されていない。南アフリカが全世界のプラチナ産出量の約80%をしめ、第二位の産出国はロシアでその割合は、12%ほど。
その世界の供給量の80%を占める南アフリカでは、実は問題が山積み。FXのスワップ金利で稼ごうとしている方ならご存知の通り、高金利といえば南アフリカランド。
政策金利が長年7%前後と非常に高金利。 こういった状態では、新規鉱山開発など膨大な借り入れを行わなければいけない第一次産業は設備投資もしにくいし、そもそも南アフリカは2001年頃からエネルギー不足問題に悩まされ、2008年には度重なる計画停電が起きている。
09年4月のロイターではこんな記事があった。重要な所を抜き出して要約すると下記の様な感じだ。
題名: South Africa says Still Facing Major Energy Crisis
邦題: 南アフリカは大きなエネルギー問題に直面している。
"The recent lack of blackouts has led to the assumption that our energy situation has been resolved," Sonjica said."Unfortunately this is far from the truth. We are in trouble unless we all begin to take responsibility for our habits of energy wastage."
南アフリカのSonjica エネルギー相によると、近年の停電の減少は我が国のエネルギー問題が解決したかのように憶測されてきた。
だが、残念ながら、そういった憶測は真実からはほど遠い。私達は未だ問題の最中にあり、エネルギーを浪費する習慣をとってきた責任を負わないといけない。
Two years ago, Sonjica urged South Africans to save 10 percent of their electricity usage every year for the next five years but so far energy savings were way below that, she said.
2年前、Sonjica エネルギー相は国民にこれからの五年間、毎年電気使用の10%を抑えるよう呼びかけたのだが、今の所、省エネは予定通りにはいってない。
Sonjica said a healthy electricity reserve margin was about 17 to 20 percent, to ensure that sudden changes in demand or supply and power-plant maintenance do not cause blackouts. Eskom said in January the reserve margin was about 8 percent, and has said its long term target is 15 percent.
Sonjica エネルギー相は急激な電力需要や供給不足、発電所の点検による停電を起こさない様にするための、電力備蓄は17%から20%と言っている。 ところが、電力会社Eskom(南アフリカの95%に電力供給している会社)は、現在の電力の貯蓄はおよそ8%であり、長期的なターゲットは15%と発言。
Mines, some smelters and big industrial operations have been receiving about 90 to 95 percent of their power requirements since the blackouts in January last year.
鉱山、精錬業者、そして大きな工業施設では、去年の1月の停電から、90%から95%の所要電力を供給されている。
The government offered a mea culpa, saying it ignored warnings from experts to build new power plants. It has warned that the crisis could last until 2013, but added that plans to host the 2010 Soccer World Cup should be unaffected.
政府は新しい発電所を建設すべきという専門家の警告を無視した事を認めました。また、これからエネルギー問題は2013年まで続く可能性があると述べた上で、2010年のワールドカップの開催は問題が無いと付け加えました。
Eskom plans to spend 343 billion rand ($37.19 billion) on a five-year investment program, to boost power generation.
電力会社Eskomは発電を底上げするためにも、37.19億ドルを5年間の投資プログラムで使う予定。
参照元 ロイター
そう、上記の記事を読めば分かる通り、南アフリカは電気が無い!それじゃぁ、他の国から電力は借りられないのか??
実は2008年4月のAfrica Newsの記事 によると借りてる。
Eskom is negotiating to buy an additional 250 megawatts of electricity per day from Hydroelectrica de Cahora Bassa, which runs the giant development in Mozambique's northern Tete province, HCB Chief Executive Paulo Muxanga said.
HCB currently provides 1,100 MW of power to Eskom, which has been forced to cut power across South Africa since the beginning of the year. The resulting blackouts caused large mines to shut down for five days and pushed precious metal prices higher.
Eskonは一日250メガワットの電力をモザンビークの電力会社、Hydroelectrica de Cahora Bassaから購入するための交渉をしているそうだ。モザンビークの会社HCBは2008年の4月から電力不足に陥っているEskomに対して、現在1100メガワットをEskomに提供している。停電によって鉱山が5日間停止してしまったおかげで、希少金属の値段が値上がりしてる。
1メガワットは100万ワット。日本の一世帯あたりの電力消費量は一年で3600キロワット。あんまり電化製品のなさそうなアフリカという事で、一年で1800キロワットと考える。そうなると、年間で約61万世帯の電力を余分に供給出来るって事だ。
ワールドカップでの海外からの観戦者50万人って事は、15万世帯くらいに換算できるのか。暑いクーラーを効かせたい真夏に短期間で約15万世帯近くの人が集まったり、スタジアム、ホテル、他のインフラ運営などを考慮に入れると、まだまだ完全に安心という訳にはいかないと思う。
さて、プラチナからずいぶん離れてしまったが、要するに南アフリカは電力会社も鉱山も精錬所も超高金利で供給を拡大するための設備投資はしにくいし、電気が不足してるから鉱山や精錬所を100%稼動する事すらできない。
さらに、電力供給事態が追いついていない状況で、今頃37.19億ドル投資するかもって言ってる状態だし、何よりもこのEskomという会社は2008年の8月時点で世界銀行やらにお金を借りてる訳で資本が無い。そして極めつけは、来年のワールドカップ。
一時的な状況にせよスタジアムは完成させないといけないし、世界中から短期間に多くの人が集まる大イベント、サッカー関連での電力供給、治安の強化、インフラの稼動と、今の南アフリカの状況を見てるとプラチナの更なる供給を期待するには、非常に心細い。
という事で、ファンダメンタルだけを見れば、プラチナが良さそうだなと思いました。
日本でプラチナを買う場合は、アメリカドルとの為替変動も関係があるので、円高ドル安の局面では有利になる。僕は長期的に円高ドル安になると見てるのでこれもプラスの要因になりますね。
後もう一つ、日本で買う場合は、田中貴金属のG&Pプランナーがよさそうですね。年会費、保管費無料で、お手ごろの手数料のみで積み立てができるのでお得だと思います。注:投資は自分の判断で行ってください。後、税金の事を考えると現物取引よりETFが良さそうです。
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