ちょっと前までFXが流行ってて、本とかで良くみたり僕も真似してみたりした戦略がある。
「高金利通貨をホールドして、リバレッジをかけて金利で月々儲けるという戦略。」
単純な様で、結構儲けてる人もいて、この月々の儲けだけで脱サラして世界一周旅行に行っちゃった人もいるんだ。その後はどうなった知らないけど、かなり多くの人がこの戦略とってた。
僕の父がその戦略を取り続けているので、
リサーチをしてみた。
高金利な通貨と言えば、ニュージーランドドルとか、南アフリカランド、トルコのリラ、アイスランドクローラとか。まぁ、高金利って事実を考えれば分かるけど、こういう国の財政状態って正直ひどい。アイスランドは破綻したしね。
下記の様に各国の財政状態を見てもらえればわかる様にどこも毎年毎年借金が増えてく様な状態。
ニュージーランド 財政赤字
ニュージーランド 対外債務
トルコ 財政赤字
アイスランド 財政赤字
参照元:Index Mundi
それでも未だ金利は高く、レートもバブル期よりは断然に低いもののじょじょに持ち直してきている。
● ニュージーランドドル NZD2.3% NZDJPY 59円
● トルコのリラTRYは8% TRYJPY 63円
● 南アフリカランドZARも8%と ZARJPY 11円
(2009年5月8日現在)
なんで、こんな破綻寸前ぽい通貨に資金が集まってたのか?
こういう通貨はどんなリスクがあるのか?
ソロスの錬金術を読んでたら見えてきた。
基本的に為替の世界でも需要と供給で為替の値段が決められている。
ドルに需要が高くなればなるほど、ドルの値段もあがる、
為替の未来を予想するって事は、プロの為替トレーダーでも難しいと
思うのだが、ソロスの錬金術では、為替の傾向を捉えるのにおもしろい式を使っていた。
貿易赤字↓ は悪化
貿易赤字↑ は改善
投資資金↑ は引き上げ(投資資金はその国に対しての企業の投資など)
投資資金↓ は投入
投機資金↑ は引き上げ (ここでいう投機資金は、僕の父や、投機家からのマネー)
投機資金↓ は投入
為替レート↓ はレートが低くなる。
為替レート↑ はレートが高くなる
為替のレートのファンダメンタルは下記の式の様に表せる。
(貿易赤字↓+ 投資資金↑+投機資金↑) ⇒ 為替レート↓
貿易赤字が悪化し、投資資金と投機資金が引き上げられると、為替のレートも低くなる傾向にある。
教科書通りにいけば、輸出より輸入の方が多い状態が続けば、為替レートは低くなり国内の景気は停滞するはず。
ところが、貿易赤字が顕著で、対外責務の最も酷いアメリカや、ニュージーランド、トルコ、アイスランドなどは、つい一年前まで為替レートも良く、国内の景気も良かった。
どんなカラクリだったのか?
通貨の金利を高める事によって、海外からの投機資金の流入を促進する事ができる。
投機資金が流入すると、通貨の需要が高まり為替レートが上昇する。
(為替レート+金利)↑ ⇒ 投機的資金↓
そうなると、この投機資金が貿易赤字の赤字分を帳消しにしてしまう働きがあるのだ。
↓貿易赤字<↓(非投機的資金+投機的資金) ⇒ 為替レート↑
これが、NZD,TRY、ZARに資金が集まっていた理由だ。
それだけでは、終わらない、この連鎖、ソロスの言う「再帰性」の原理、フィードバックループの原理が働いて
長い期間この動きが続いていく。
(為替レート↑+金利↑) ⇒ (投機的資金↓>貿易赤字↓) ⇒ 為替レート↑ ⇒ (投機的資金↓>貿易赤字↓)
もちろん、金利を上げる事は、将来の支払いが増えていく事だから、
政府の財政を圧迫していく。下記の式の様になる。
さらに自国の為替レートが高くなっていくという事は、輸出産業には厳しく、更なる貿易赤字を広げる事になる。
最終的にはどうなるのか? 貿易赤字と利払い金が投機資金でカバーできなくなり、為替レートが下がり始める。
そうなると今度は負のネガティブループを始める。これが今回起こったバブルの崩壊になる。
(貿易赤字↓ + 利払い金↑)> 投機的資金↓ ⇒ 為替レート↓ ⇒ (投機的資金↑ + 貿易赤字↓ + 利払い金↑) ⇒ 為替レート↓↓
これが今回、アイスランド、ニュージーランドドル、ターキーなどで起こった事だ。
もちろん、アメリカのドルもそう。 (ポンド、韓国ウォンなどはあまり情報が無いので分からない。)
これは、机上の論理かもしれないし、他にも政府は自国の通貨を発行していく事など色々な要素があるとは思うが、高金利の通貨に投資していくという事は、突然為替のレートが劇的に落ち始める可能性があるという事になる。さらに、投機的資金が入ってこなくなれば、利払いをするための資金が増えるので、利率を下げる。
スワップ金利の戦略を取る投機家は、元本が急激に下がる事、暴落にそなえてリバレッジの許容範囲を考慮しておく事が重要だね。まぁ、もう既に起こったことなんでこんな事言ってもしょうがないけど、これから似たような状況は必ず起こるはずなので、自分の頭で理解するために詳細に書いてみた。
NZD,TRYはまだ比較的高金利であり、レートも上がってきている。
僕の予想では、USDが下がった時にもう一度、これらの高金利通貨に影響があるのではないかなと思う。
FXの難しい所は、いくらこういう通貨の傾向が分かったからと言って、何時レートが上がるのか、下がるのかは予想が非常にしにくい所にあると思う。僕は今、USDはまだまだ下がると思っているけど、自分の資金でUSDをショート(売って儲ける事)するという自信は無い。
通貨の傾向を知る事の恩恵は、他の国の株などに投資した時の「一つの要素」として考えるべきなんじゃないかって思う。
例えば、中国にある原油採掘する会社で、過去10年間配当があって、PERも低い、業績も伸びている、原油の需要と供給を見ると業界も未来がある。
そんな株があって、さらに中国の人民元が日本の円と比べて、割安だといえる場合、
ただ「業界の未来があって、業績も良く、株が割安」だから買うって言うより「通貨が割安」という事で儲けられる要素が増えるから有利だよね。
ソロスの錬金術はおもしろいね。この間書いた山口恵理子さんの様に本に書いてある事は信じれないって言う人もいるけれど、僕はこの本が無かったらここまで国際金融、為替市場に関して知識を深める事が出来なかったな。
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2 件のコメント:
すごいねぇ。
僕、先物とかオプション、ショートだのロングだの、他には為替関連。
ここら辺の用語聞くと、頭がショートします。
ながのさん、
コメントありがとう。そうだね。言葉は小難しいけど、結局需要と供給で値段は決まるから基礎は一緒だと思うよ。僕は先物も為替も株も切っては切り離せない物だと思ってる。原油の値段が上がれば、ウォールマートの様なトラックで商品を運ぶ事が多い企業はコストがよりかかるしね。航空業界もそうだよね。コモディティーの需要と供給を調べると、株式市場に対する影響も想像しやすいと思うんだ。為替もそう。円が高ければ輸出産業には厳しくなるしね。全ての要素を包括的に考える事が必要かなと思います。
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